食べないのは、わがままだから?―食べにくさの背景にある、脳と身体の負担を考える

食べないのは、わがままだからとは限りません。子どもはすでに食べようとしていても、感覚の刺激、口の中で食べ物を動かす負担、食べた後の不快感によって、うまく食べられないことがあります。食べる前、口の中、食べた後のどこで困っているかを考えます。

執筆
スクエアクリニック
家庭の食卓で料理を前に、スプーンを持ちながら少し考えるように座っている子ども

夕食の時間。家族と同じ料理を前にしても、なかなか食べ始めない。においをかいだだけで顔をそむける。口に入れても、すぐに出してしまう。いつまでも噛み続けて、食事が終わらない。

そんな様子が続くと、大人はつい、

「好き嫌いしないで」
「一口だけでも食べて」
「食べようと思えば食べられるでしょう」

と声をかけたくなるかもしれません。

けれど、食べない子どもが、食べようとしていないとは限りません。

子どもはすでに一生懸命食べようとしていても、食べる過程のどこかに負担があるため、うまく食べられないことがあります。

食べることは、食べ物を口へ運ぶだけの動作ではありません。

見た目やにおいを感じ、口に入れ、噛み、舌で動かし、飲み込みやすい形にまとめ、飲み込む。食べた後も、食道、胃、腸などを通る過程が続きます。

このどこかが子どもにとってつらければ、外からは同じ「食べない」という行動に見えても、その背景は一人ひとり異なります。

食べることの、どこがつらいのだろう

食べにくさを考えるときは、まず三つの入口に分けて見てみます。

口に入れる前や、入れた瞬間からつらい

料理のにおい、見た目、温度などが、子どもにとって強い刺激になることがあります。

大人には気にならない程度のにおいでも、子どもには強く感じられることがあります。食べ物の色や形を見ただけで不安になったり、熱さや冷たさがつらかったりすることもあります。

また、口に入れた瞬間の味や食感が予想以上に強く感じられ、反射的に口から出してしまう場合もあります。

このようなとき、子どもは食べる前から身構えているのかもしれません。食べ物を避ける行動だけを見ると、食べる気がないように見えますが、実際には強い刺激から自分を守ろうとしていることがあります。

ただし、感覚の感じ方だけで、すべての食べにくさを説明できるわけではありません。口の中の動きや、食べた後の身体の状態にも目を向ける必要があります。

口の中で動かしにくい

食べ物を口に入れた後は、噛み、舌で移動させ、飲み込みやすい形にまとめ、口の奥へ送る必要があります。

これらは自然に行っているように見えますが、口や舌の細かな動きと協調が必要です。

噛むことに時間がかかる、食べ物をいつまでも口の中にためる、飲み込む前に止まる、特定の硬さや形のものを避けるといった様子があるときは、口の中で食べ物を扱うことに負担がある可能性があります。

いつも片側だけで噛んでいる場合も、原因を決めつけることはできませんが、歯や口の痛み、動かしにくさなどがないか確認する入口になります。

このような子どもは、わざとゆっくり食べているのではなく、自分なりに時間をかけて食べ物を動かし、飲み込もうとしているのかもしれません。

食べた後につらい

食事と腹痛、吐き気、逆流感、腹部の張りなどの不快な経験が重なると、子どもにとって食事そのものがつらいものになることがあります。

また、便秘や下痢などの不調が続いていると、「食べると、またつらくなるかもしれない」と感じ、食べることを避ける場合もあります。

子どもは、自分の身体で起きていることを十分に説明できないことがあります。

「お腹が痛い」「気持ちが悪い」とは言わず、食事の前に不機嫌になる、少し食べると席を離れる、食べ物を見るだけで嫌がるといった形で表れることもあります。

ただし、こうした行動だけで消化器の病気や原因を判断することはできません。食べる量だけでなく、食事の前後にどのような様子や身体症状があるかを、医療者へ伝えられるようにしておくことが大切です。

食べさせる方法を増やす前に

食べない状態が続くと、盛りつけを変える、ごほうびを使う、一口だけ食べさせるなど、食べさせるための方法を増やしたくなることがあります。

こうした工夫が役立つ場合もあります。しかし、子どもが強い刺激や身体的な負担を感じているときには、さらに頑張るよう求めることになってしまうかもしれません。

大切なのは、まず、

「どうすれば食べさせられるか」

だけではなく、

「この子は、食べることのどこで困っているのだろう」

と考えることです。

急に食べられなくなったとき

以前は食べていたものを急に避けるようになった、食事量が短期間で大きく減った、吐くことや詰まること、汚染への強い恐怖が出てきた場合は、一般的な好き嫌いや長く続く食べにくさとは分けて考える必要があります。

感染後から食行動が急に変わったり、強迫、不安、チック、退行など、ほかの急な変化を伴ったりする場合には、PANSを含む神経免疫の変化が背景にないか、医療的な評価が必要になることもあります。

食事量が急激に減ったときや、体重減少、成長への影響、脱水の兆候があるときは、早めに医療機関へ相談してください。

飲み込むと痛い、食べ物が詰まる感じがある、嘔吐を繰り返す、強い腹痛がある、血便や黒色便が見られる場合も、家庭だけで経過を見続けず、医療機関へ相談する必要があります。

今日からできること

食べさせようとする前に、「いつ、どこでつらそうか」を一つ確認する

次の三つのうち、どこで子どもの様子が変わるかを見てみます。

口に入れる前や、入れた瞬間なのか。
口の中で動かしているときなのか。
食べた後なのか。

においをかいだ時点で顔をそむけるのか、特定の食感を口に入れると出すのか、噛むことに時間がかかるのか、飲み込む前に止まるのか、食後に腹痛や吐き気を訴えるのか。

すべてを家庭で調べる必要はありません。また、この観察だけで、感覚の問題、口腔機能の問題、胃食道逆流、食物アレルギー、PANSなどを診断することはできません。

まず一つ、子どもがつらそうになる場面を見ることが、食べないことを責める前にできる最初の一歩です。

食べない子どもは、食べようとしていないとは限りません。

子どもはすでに努力していても、食べる過程のどこかに負担があるため、うまく食べられないことがあります。

食べさせる方法を増やす前に、その子にとって、食べることのどこがつらいのかを考えてみてください。

医療・健康情報について

この記事は、子どもの食べにくさについて理解するための一般的な情報であり、個別の診断や治療を目的とするものではありません。

食事量の急激な低下、体重減少、脱水、強い腹痛や繰り返す嘔吐、飲み込みの痛みや詰まりなどがある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

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参考文献

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