集中できないのは、努力が足りないから?―注意とエネルギーを奪う負担に目を向ける

集中できない姿を、努力不足だけで判断していませんか。子どもは、課題へ向けるはずの注意やエネルギーを、別の負担へすでに使っていることがあります。行動を責める前に、努力を支える脳と身体の状態へ目を向けるための入口記事です。

執筆
スクエアクリニック
家庭の学習机で鉛筆を持ち、プリントへ取り組みながら考えている男の子

宿題を始めたはずなのに、なかなか進まない。

窓の外を見たり、鉛筆を触ったり、何度も席を立ったりする。声をかけると少しだけ手を動かすものの、またすぐに止まってしまう。

そんな姿を見ると、

「もう少し集中すれば、すぐに終わるのに」
「本気でやろうとしていないのでは?」
「努力が足りないのかな」

と思うことがあるかもしれません。

けれど、子どもは机に向かっています。問題を読もうともしています。子どもなりに、すでに始めようとしているのです。

それでも進められないとき、必要なのは、さらに強く「集中して」と言うことだけではないかもしれません。

集中できない子どもは、努力していないのではなく、課題へ向けるはずの注意やエネルギーを、別の負担へすでに使っている可能性があります。

集中できないことと、努力していないことは同じではありません

集中は、「やろう」と思う気持ちだけで続けられるものではありません。

目の前の課題に注意を向け、その状態を保ち、必要な情報を覚え、順番に考え、手を動かすには、脳と身体のさまざまな働きが必要です。

子どもはすでに頑張っていても、

* 周囲の刺激へ注意が引かれている
* 身体の不快感や不安を抱えている
* 睡眠不足や疲労で考える力が続かない
* 説明を聞き取り、整理することに多くの力を使っている

ということがあります。

外からは、ぼんやりしている、話を聞いていない、すぐに飽きるように見えるかもしれません。

しかし子どもの中では、目の前の課題とは別のものを処理するために、すでに注意やエネルギーが使われていることがあります。

注意を奪うものがあるのかもしれません

人が一度に向けられる注意には限りがあります。

たとえば、テレビの音や家族の話し声が聞こえる部屋で宿題をしているとします。多くの人は、それらを背景の音として扱えますが、音を強く感じやすい子どもには、無視することが難しい刺激かもしれません。

注意を奪うものは、音だけではありません。

頭痛、腹痛、鼻づまり、かゆみ、服の感触などの身体の不快感があると、脳はその感覚を処理し続けます。

また、

「間違えたらどうしよう」
「怒られるかもしれない」

という不安で頭がいっぱいになっていると、目の前の説明や問題へ向けられる注意が少なくなることがあります。

このようなとき、子どもは何も考えていないのではありません。音、身体の感覚、不安など、別のものへ注意を使っている可能性があります。

集中を続けるエネルギーが足りないこともあります

集中を続けるためには、睡眠や体調を含む、身体の土台も必要です。

夜になかなか眠れない、眠りが浅い、何度も目が覚めるなど、十分な睡眠がとれていなければ、起きていても頭が働きにくくなることがあります。

学校で一日頑張ったあとには、宿題へ向けるエネルギーが残っていないこともあります。最初の一問には取り組めても、途中で急に手が止まったり、姿勢を保てなくなったりする子どももいます。

また、鉄欠乏などの身体的な問題が、疲れやすさや注意の保ちにくさに関係する場合もあります。

集中できる時間が短いときには、意欲だけを見るのではなく、眠れているか、強い疲労がないか、体調に変化がないかにも目を向ける必要があります。

「聞く」だけで、多くの力を使っている子もいます

先生が教室で、

「教科書を開いて、黒板を写したら、プリントの二番を始めてください」

と説明したとします。

この指示に従うためには、ただ音が耳に入るだけでは足りません。

子どもは、

* 雑音の中から先生の声を選ぶ
* 言葉の意味を理解する
* 指示を覚え、順番に行動する

という処理をしています。

この処理に多くの力を使う子どもは、説明を聞くだけで疲れたり、課題を始める前に注意を使い切ったりすることがあります。

名前を呼べば振り向き、会話もできるのに、教室のように音が多い場所では説明を理解しにくくなることもあります。

このような、音や会話を聞き取って理解することの難しさは、Listening Difficultiesという包括的な言葉で表現されることがあります。

大人には「聞いていない」ように見えても、実際には、聞き取り、理解し、覚えることに懸命に力を使っているのかもしれません。

同じ「集中できない」でも、背景は一人ひとり違います

外から同じように見える集中の難しさでも、背景は一人ひとり異なります。

注意を奪う刺激がある子もいれば、身体の余力が少なくなっている子もいます。聞いた情報を処理することに、大きな負担がかかっている子もいます。

大切なのは、「集中できない」という行動だけを見て、怠け、性格、努力不足と決めつけないことです。

家庭や学校での様子に加えて、睡眠、疲労、痛みや不快感、不安、説明の聞き取り方などを合わせて見ることで、子どもがどこに力を使っているのかが見えてくることがあります。

急に集中できなくなった場合や、強い疲労、睡眠の大きな変化、頭痛、腹痛、食欲低下、気分や行動の変化などを伴う場合には、医療機関へ相談することも大切です。

「集中して」と言う前に、負担を一つ確認する

今回、最初にしてほしいことは、集中させる方法を増やすことではありません。

「集中して」と言う前に、

この子の注意やエネルギーを奪っているものはないだろうか

と考え、負担を一つ確認してみてください。

たとえば、

* 周囲の音がつらくないか
* 昨夜は眠れていたか
* 痛いところや不快なところはないか
* 不安なことで頭がいっぱいではないか
* 言われた内容を聞き取れていたか

という中から、その子の様子に合うものを一つだけ確認します。

すべてを家庭で調べ、原因を見つけなければならないという意味ではありません。

子どもを責める前に、「何かへ注意やエネルギーを使っているのかもしれない」と見方を変えるための最初の一歩です。

子どもへさらに努力を求める前に

集中できない子どもは、何もしていないとは限りません。

周囲の刺激を処理し、身体の不快感を我慢し、不安を抱え、疲れた状態で説明を理解しようとしているかもしれません。

子どもは、すでに努力していることがあります。

それでもうまくできないときには、さらに努力を求める前に、その努力を支える脳と身体の状態へ目を向けることが大切です。

医療・健康情報について

この記事は、子どもの集中の難しさを考えるための一般的な医療・健康情報です。

個別の診断や治療を目的とするものではありません。急な変化、強い疲労や身体症状、学校や家庭生活への大きな支障がある場合は、医療機関へ相談してください。

集中できないに関する記事を見る

参考文献

  1. Lundahl A, Kidwell KM, Van Dyk TR, Nelson TD. A meta-analysis of the effect of experimental sleep restriction on youth’s attention and hyperactivity. ↗Developmental Neuropsychology. 2015;40(3):104-121.
  2. Astill RG, Van der Heijden KB, Van IJzendoorn MH, Van Someren EJW. Sleep, cognition, and behavioral problems in school-age children: a century of research meta-analyzed. ↗Psychological Bulletin. 2012;138(6):1109-1138.
  3. Gutema BT, Sorrie MB, Megersa ND, et al. Effects of iron supplementation on cognitive development in school-age children: systematic review and meta-analysis. ↗PLOS ONE. 2023;18(6):e0287703.
  4. Dillon H, Cameron S. Separating the causes of listening difficulties in children. ↗Ear and Hearing. 2021;42(5):1097-1108.
  5. Schiller IS, Remacle A, Durieux N, Morsomme D. Effects of noise and a speaker’s impaired voice quality on spoken language processing in school-aged children: a systematic review and meta-analysis. ↗Journal of Speech, Language, and Hearing Research. 2022;65(1):169-199.
  6. Rabner JC, Ney JS, Kendall PC. Cognitive functioning in youth with anxiety disorders: a systematic review. ↗Clinical Child and Family Psychology Review. 2024;27(2):357-380.
  7. Blaiss MS; Allergic Rhinitis in Schoolchildren Consensus Group. Allergic rhinitis and impairment issues in schoolchildren: a consensus report. ↗Current Medical Research and Opinion. 2004;20(12):1937-1952.