原始反射・感覚

モロー反射とは?―突然の刺激に、身体が先に反応するとき

モロー反射は、赤ちゃんの時期にみられる原始反射の一つです。突然の刺激に身体が先に反応する仕組みを知り、「大げさ」「気にしすぎ」だけではない身体からの見方と、親子で楽しめる「お星さま→小さな種」の遊びを紹介します。

執筆
スクエアクリニック
家庭の学習机で鉛筆を持っている途中、突然の刺激に少し驚いて手を止めている男の子を、母親が静かに見守っている様子

授業中、子どもが静かにプリントへ取り組んでいます。

そのとき、突然チャイムが鳴りました。

子どもの肩がびくっと上がり、腕に力が入り、持っていた鉛筆が止まります。

あるいは、家でドアが勢いよく閉まったとき。
近くで物が落ちたとき。

周囲の大人には些細なことでも、子どもの身体には大きな反応が起きることがあります。

そんな様子を見ると、

「そんなに驚かなくてもいいのに」

「気にしすぎじゃない?」

と思うことがあるかもしれません。

でも、その反応を子どもがわざと起こしているとは限りません。

考えるより先に、身体が動くことがあります。

その身体の仕組みを考える一つの入口が、モロー反射です。

原始反射は、誰もが赤ちゃんのときに持っている

モロー反射は、「原始反射」と呼ばれる身体の反応の一つです。

原始反射という言葉を初めて聞くと、何か問題のある子どもだけにみられるもののように感じるかもしれません。

でも、そうではありません。

原始反射は、誰もが赤ちゃんのころに持っている、自動的な身体の反応です。

原始反射そのものについて詳しく知りたい方は、「原始反射とは?」で基本から紹介しています。

生まれたばかりの赤ちゃんは、大人のように自分の身体を自由に調整することがまだできません。

そこで、身体の位置が急に変わったり、強い刺激が入ったりすると、本人が考える前に身体が反応する仕組みがあります。

赤ちゃん自身が、

「今は驚こう」

「腕を動かそう」

と決めているわけではありません。

刺激に対して、身体が自動的に動きます。

モロー反射では、身体全体が大きく反応する

モロー反射では、突然の刺激や身体の支持が急に変化したときなどに、赤ちゃんの身体が大きく反応します。

腕が外側へぱっとひらき、手の指も広がります。

そのあと、ひらいた腕が身体の方へ戻るように動きます。

泣くこともあります。

つまりモロー反射は、腕だけの反応ではありません。

突然の変化に対して、身体全体が自動的に反応するパターンです。

赤ちゃんの時期には、それが正常な発達の仕組みとしてみられます。

成長すると、身体はもっと自由に動けるようになる

赤ちゃんが成長すると、自分で頭や身体を支え、姿勢を変え、手足をより自由に使えるようになります。

刺激を受けたときにも、毎回身体全体が同じように動くのではなく、その場に合わせて身体を調整できるようになっていきます。

原始反射は、単純になくなるというより、成長とともに、より自由で複雑な姿勢や動きの中へ組み込まれていきます。

この発達上の変化を、一般に「統合」と表現することがあります。

赤ちゃんのころには自動的に起きていた身体の反応が、成長とともに、自分で使える身体の動きの中へ広がっていく、と考えると分かりやすいでしょう。

年齢が上がった子どもの身体を見る、一つの手がかり

成長した子どもでも、突然の刺激に対して身体全体が大きく反応することがあります。

急な物音で強く驚く。

身体が固まる。

していた動作が止まる。

緊張がしばらく続く。

こうした姿を見たとき、モロー反射という身体のパターンを知っていると、

「大げさに反応している」

という見方だけではなく、

「本人の意思より先に、身体が大きく反応しているのかもしれない」

という視点を持つことができます。

突然の刺激に強く反応する様子だけで、モロー反射が残っていると家庭で判断することはできません。

モロー反射は、子どもの身体を理解するための一つの視点です。

本人も、困っている側かもしれない

突然の刺激に身体が反応するたびに、その負担を受けているのは子ども自身です。

やりたいことがあるのに、身体が止まる。

気にしたくないのに、強く驚く。

そのまま続けたいのに、一度身体へ力が入る。

そして、また元の活動へ戻ろうとする。

本人は、

「驚かないようにしよう」

と思っているかもしれません。

それでも、考えるより先に身体が反応することがあります。

そんなときに、

「気にしないで」

「大げさだよ」

「我慢して」

と言われても、すぐにはどうにもできないことがあります。

だから、まず変えたいのは子どもではなく、大人の見方です。

「どうしてそんなことをするの?」

ではなく、

「この子の身体には、今どんなことが起きたのだろう?」

と考えてみます。

突然の刺激が入った瞬間、身体全体を見てみる

その瞬間の身体全体にも少し視野を広げて見てみます。

肩はどうなったでしょうか。

腕や手には力が入ったでしょうか。

呼吸は一瞬止まったでしょうか。

体幹は固くなったでしょうか。

それまでしていた動作は止まったでしょうか。

これは、モロー反射が残っているかを判定するためのチェックではありません。

子どもがどれくらい大きく身体で反応しているのかに、大人が気づくための見方です。

子どもの行動の意味を違う視点からみると、大人の関わり方にも別の選択肢が生まれます。

身体の仕組みを知ったら、「どんな経験を増やせるか」を考えてみる

身体が自動的に反応する仕組みを知ると、

「では、この子の身体に、どんな経験を増やせるだろう?」

という次の視点が生まれます。

成長した身体は、

自分で動き、

動きの大きさを変え、

途中で止まり、

また動き、

姿勢を変えることができます。

そこで、原始反射に関連する身体のパターンを考えるときには、反射を無理に起こすのではなく、その身体の動きを、本人が自分の意思で経験してみるという考え方があります。

今回の目的は、反射を消すことではありません。

子どもが自分の身体を、安心して、楽しく使う経験を一つ増やすことです。

モロー反射の「ひらく → 戻る」を、遊びにしてみる

モロー反射には、

身体や腕が外へひらく
↓
身体側へ戻る

という大きな身体のパターンがあります。

赤ちゃんのころには、この動きが刺激によって自動的に起こります。

そこで今回は、この身体のパターンをヒントにして、

「お星さま → 小さな種」

という遊びにしてみます。

大切なのは、モロー反射を再現することではありません。

子ども自身が、

大きくなる。

小さくなる。

また動きたければ動く。

終わりたければ終わる。

という身体の経験を、自分のペースで楽しむことです。

お星さま → 小さな種

周りにぶつかる物のない、安全な場所で仰向けになります。

まず、腕や脚を楽な範囲でひらいて、

「お星さま」

になります。

身体いっぱいに大きなお星さまになる必要はありません。

本人が気持ちよく動ける大きさで十分です。

次に、自分の腕で自分を包むようにしながら、脚も無理のない範囲で身体へ近づけ、

「小さな種」

になります。

そして、

「またお星さまになりたい」

と思ったら、もう一度ひらきます。

一度で終わってもかまいません。

大人は、

「お星さまになる?」

と誘って、一緒にやってみてもよいでしょう。

「正しくやる」より、楽しくできること

この遊びには、完成させなければならない正しい形はありません。

今日は見ているだけでもよい。

腕だけ少しひらいてもよい。

小さな種だけでもよい。

途中でやめてもよい。

本人が「もう一回」と言えば、またやってもよい。

大切なのは、

やるか、やらないかを本人が選べること。

身体の大きさや動き方を本人が決められること。

そして、遊びそのものを楽しめることです。

大人は、子どもの腕や脚を動かして形を作るのではなく、

誘う人、一緒に楽しむ人

で十分です。

「もっとひらいて」

「あと何回」

と、訓練にする必要はありません。

なぜ「遊び」にするの?

苦手なことがあると、

「練習しなければ」

と考えやすくなります。

でも子どもは、遊びの中でたくさん身体を使っています。

伸びる。

丸くなる。

転がる。

押す。

引く。

握る。

離す。

子どもが、

「楽しい」

「もう一回やりたい」

と思える動きなら、身体を使う経験を日常の中へ自然に増やすことができます。

そして大人にも、

「叱る」

「我慢させる」

以外に、

一緒に遊ぶ

という選択肢が増えます。

今回の「お星さま→小さな種」も、その一つです。

楽しければ、遊びの一つとして置いておく

この遊びに、決まった回数や期間は設定しません。

「モロー反射が統合されるまで続ける」というものでもありません。

本人が、

楽しい。

心地よい。

安心してできる。

またやりたい。

と思うなら、親子の遊びの一つとして生活の中に置いておけます。

反対に、

嫌がる。

痛い。

不安になる。

疲れる。

やらなければいけない課題になる。

親子の負担になる。

そんなときは、いったんやめてかまいません。

変化がないから回数を増やす必要もありません。

その子にとって、よい身体経験になっているか。

それを大切にします。

遊ぶときは、身体を無理に大きくひらいたり、勢いや反動をつけたりしません。

わざと驚かせて反応を引き出すこともしません。

痛み、めまい、息苦しさ、吐き気、強い不安などがあれば、その場でやめます。

子どもの問題を増やすのではなく、見方と選択肢を増やす

モロー反射について知ったからといって、

「うちの子には反射が残っているのでは?」

と、すぐに答えを出す必要はありません。

原始反射という身体の仕組みを知ることの価値は、子どもへ新しい問題の名前をつけることではありません。

それまで、

「大げさ」

「気にしすぎ」

「我慢が足りない」

と見えていた反応に、

「本人も、意思より先に身体が反応して困っているのかもしれない」

という視点を一つ加えることです。

その見方があると、

叱るだけではなく、

身体を少し広く見ることができます。

そして、

「この子が楽しく身体を使える経験を、一つ増やしてみよう」

と考えることもできます。

子どもは、すでに自分の身体で毎日を過ごし、頑張っています。

原始反射を知ることは、その子の限界を決めるためではありません。

子どもを理解する方法と、子どもと一緒にできることを一つ増やすための視点です。

今日、もしよければ、

「お星さまになる?」

と誘って、一緒に遊んでみてください。

参考文献

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