ブランコに乗ると、身体がぎゅっと固まる―「怖がり」だけではない身体の反応を、モロー反射という視点から考える
ブランコには乗ってみたいのに、少し揺れると身体がぎゅっと固まってしまう。そんな子どもの様子を「怖がり」だけで見ず、身体の位置や支持が急に変わったときの全身反応を、モロー反射という視点から考えます。家庭では、本人が自分で動き、真ん中へ戻り、自分で止める「ゆらゆら船あそび」を一つ紹介します。
- 執筆
- スクエアクリニック

公園へ遊びに行く。
ほかの子どもたちは、ブランコへ走っていきます。
楽しそうに笑いながら、どんどん高くこいでいる。
わが子にも、
「ブランコ、乗ってみる?」
と声をかける。
座ることはできる。
でも、なぜか自分ではこごうとしない。
「少し押してあげようか」
と思って背中を押そうとすると、嫌がって声をあげる。
せっかく公園へ来たのに、あまり楽しそうに見えない。
周りの子は、あんなに楽しそうに遊んでいるのに。
「楽しくないのかな」
「どうしてそんなに怖いんだろう」
「もう少し思い切って遊べたらいいのに」
「うちの子は、少し怖がりなのかな」
そんなふうに感じることがあるかもしれません。
保護者が困っているのは、ブランコができないことだけではありません。
本当は、
わが子にも公園を楽しんでほしい。
友達と同じように、笑って遊べたらいいのに。
そう思っているのではないでしょうか。
「怖がり」だけではないのかもしれない
ブランコが苦手な様子を見ると、
「怖がり」
「慎重すぎる」
「運動が苦手」
と考えたくなることがあります。
でも、別の見方もあります。
本人は、やりたくないのではなく、ブランコが動き始めた瞬間に、身体全体へ強い緊張が入っているのかもしれません。
少し揺れる。
すると、
肩に力が入る。
腕が固くなる。
鎖をぎゅっと握る。
足が動かなくなる。
身体を前後へ動かせなくなる。
ブランコをこぐためには、足だけではなく、体幹を動かしたり、身体を少し傾けたり、力を入れたり抜いたりしながら、自分の身体を調整します。
ところが、全身がぎゅっと固まると、使えるはずの身体まで自由に動かしにくくなります。
揺れる
↓
身体が緊張する
↓
鎖を強く握る
↓
足や体幹を動かしにくくなる
↓
うまくこげない
↓
さらに怖くなる
そんな流れが起きていることもあります。
「できないから怖い」だけではなく、
怖さや身体の反応が強いから、動けなくなっている
という見方もできるのです。
モロー反射という視点
乳児期には、急な刺激や身体の支持が急に変わることなどに対して、身体全体が自動的に反応するモロー反射があります。モロー反射は乳児期にみられる正常な原始反射で、本人が意識的に起こす運動ではありません。
成長した子どもがブランコを怖がる様子だけで、「モロー反射が残っている」と判断することはできません。
それでも、
身体の位置や支持が急に変わったときに、本人の意思より先に身体全体が反応することがある
という視点を知っていると、子どもの様子が少し違って見えてきます。モロー反射そのものは乳幼児の神経発達評価に用いられる原始反射であり、学童期のブランコ場面そのものをモロー反射とみなすものではありません。
「もっと足を動かせばいいのに」
ではなく、
「足を動かす前に、身体全体が固まってしまっているのかもしれない」
と考えることができます。
モロー反射について詳しく知りたい方は、「モロー反射とは?―突然の刺激に、身体が先に反応するとき」もご覧ください。
身体が「動かされる」だけでなく、自分で動かせる経験へ
モロー反射は、赤ちゃん自身が「今から動こう」と決めて起こす動きではありません。
刺激や身体の支持の急な変化に対して、身体が先に反応するものです。
成長すると、私たちは少しずつ、
自分で身体を動かす。
動く大きさを変える。
元の位置へ戻る。
途中で止める。
といったことができるようになります。
ブランコでは、遊具が動くことで、自分の身体の位置も次々に変わります。
もし、その変化に身体全体が強く反応して固まってしまうなら、無理にもっと大きく揺らすことから始めなくてもよいのかもしれません。
まずは安定した場所で、
自分で動き始める。
自分で少し位置を変える。
自分で真ん中へ戻る。
自分で止める。
そんな身体の経験を、遊びの中で作ってみます。
反射を消すための運動ではありません。
自分の身体を、自分で動かせる経験を一つ増やしてみる。
それが、今回の「ゆらゆら船あそび」の考え方です。
ブランコを無理に好きにさせなくてもいい
ブランコのように、遊具によって身体が動かされることが負担なら、まずは自分で動きを作れるところから始めてもかまいません。
何度もブランコに乗せて、怖さに慣れさせる必要はありません。
本人が自分で、
始める。
少し動く。
真ん中へ戻る。
止まる。
を決められる経験なら、安心できる場所で作ることができます。
そこで、座って、自分で小さく前後に揺れる「ゆらゆら船あそび」をしてみます。
今日からできる「ゆらゆら船あそび」
床やマットに座り、膝を軽く曲げて、足の裏を床につけます。
両手は、太ももの上や床など、本人が安心できるところへ置きます。
お尻と足は床につけたまま、
上半身をほんの少し前へ。
そして、真ん中へ戻ります。
今度は、
ほんの少し後ろへ。
また、真ん中へ戻ります。
小さな波の上にいる船のように、
「ゆら〜」
「もどる」
と、本人の好きな速さで動いてみます。
大きく揺れる必要はありません。
最初は、見ている人には「動いたかな?」と思うくらいの小さな動きでも大丈夫です。
大切なのは、
自分で始める。
自分で揺れの大きさを決める。
自分で真ん中へ戻る。
自分で止める。
ことです。
大人が背中を押したり、身体を引っ張ったりして揺らす必要はありません。
「もっと大きく」
「あと5回」
とも言いません。
本人が、
「もう少し揺れたい」
「もう一回」
と思ったら、もう一度。
「ここで止まる」
「今日はやらない」
も本人が決めます。
これは、ブランコの練習でも、怖さに慣れさせる訓練でもありません。
「揺れるときも、自分で動きを作って、自分で真ん中へ戻り、自分で止められる」
という身体の経験を、安心できる場所で楽しむ遊びです。
痛み、めまい、吐き気、息苦しさ、強い恐怖や不安が出た場合は中止してください。
また、以前は平気だった動きを急に強く怖がるようになったり、ふらつきや転倒など別の変化もみられたりする場合は、原始反射だけで考えず、必要に応じて医療機関へ相談してください。小児のめまい・平衡障害には複数の原因があり、急な新規症状や他の神経・平衡症状を伴う場合には別の評価が必要になることがあります。
まとめ
次に公園へ行ったとき。
ブランコに乗らないわが子を見て、
「また怖がっている」
と思う代わりに、
「この子の身体には、どんな怖さがあるんだろう」
と少しだけ見方を変えてみる。
それだけでも、関わり方は変わるかもしれません。
無理に背中を押さなくてもいい。
今日は別の遊びを一緒に楽しんで帰ってもいい。
家で本人がやりたければ、小さな「ゆらゆら船あそび」をしてみてもいい。
今回、最初に変えたいのは、ブランコがこげるかどうかではありません。
「怖がりだからできない」から、
「身体が強く反応しているのかもしれない」へ。
大人の見方が一つ増えることです。
そして、
動かされるだけではなく、自分で動く。
戻されるのではなく、自分で戻る。
止めてもらうだけではなく、自分で止める。
そんな経験を、安心できるところから少しずつ増やしていきます。
原始反射を知ることは、子どもの限界を決めることではありません。
その子の身体に合う見方と、支え方の選択肢を増やすことです。
参考文献
- Pattnaik P, Al Khalili Y. Moro Reflex. ↗Updated 2025 Aug 2. In StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. PMID: 31194330.
- Zafeiriou DI. Primitive reflexes and postural reactions in the neurodevelopmental examination. ↗Pediatr Neurol. 2004;31(1):1-8. PMID: 15246484.
- Futagi Y, Toribe Y, Suzuki Y. The grasp reflex and moro reflex in infants: hierarchy of primitive reflex responses. ↗Int J Pediatr. 2012;2012:191562. doi:10.1155/2012/191562. PMID: 22778756. PMCID: PMC3384944.
- American Occupational Therapy Association. Practice Smart. Recommendation 8: Don’t use reflex integration programs for individuals with delayed primary motor reflexes without clear links to occupational outcomes. ↗

