栄養・環境

水だけ飲んでいれば大丈夫?―夏の子どもに水分と塩分が必要な理由

夏の外遊びや運動後、水を飲んでも子どもがぼんやりする、だるそうにする、イライラするときには、汗で水分とナトリウムの両方を失っている可能性があります。普段の減塩と大量発汗後の補給を分けて考え、家庭でできる手作りドリンクと安全上の注意を解説します。

執筆
スクエアクリニック
汗をかいた小学生が水を飲み、テーブルに水、レモン、少量の食塩、砂糖、アガベシロップが置かれている。「水だけで大丈夫? 夏の汗と塩分」と書かれた画像。

夏休みの午後。

外で遊んで帰ってきた子どもが、冷たい水を一気に飲みました。

これで元気になると思ったのに、しばらくするとソファに横になり、

「頭が痛い」
「身体がだるい」
「宿題はできない」
「なんだかイライラする」

と言っています。

水は飲んだはずなのに、どうして元気にならないのでしょうか。

夏のだるさや頭痛、ぼんやりには、暑さそのもの、睡眠不足、食事量の低下、感染症、貧血など、さまざまな背景があります。

今回はその中から、

汗と一緒に、水分だけでなくナトリウムも失っている可能性

を取り上げます。

「やる気がない」のではないかもしれません

外遊びや運動のあと、子どもが宿題を始められなかったり、返事が遅くなったりすると、大人には「遊び疲れてだらけている」と見えることがあります。

けれども、子ども自身も困っているかもしれません。

水を飲んでもだるさが取れない。
頭がうまく働かない。
身体を動かしたくても重くて動けない。
理由が分からないままイライラする。

子どもは、身体の中で水分や電解質が失われていることを、うまく言葉では説明できません。

「やる気」の問題と決めつける前に、まず身体の状態を整える必要がある場合があります。

汗は水だけではありません

汗の大部分は水ですが、ナトリウムなどの電解質も含まれています。

暑い場所で長時間遊んだり、運動で服が濡れるほど汗をかいたりすると、身体から水分と一緒に塩分も失われます。

通常の生活で発汗が多くなく、食事もしっかり取れている場合は、水やお茶を中心とした補給で足りることもあります。

毎回、塩分入りの飲み物が必要なわけではありません。

水分と塩分を一緒に補うことを考えたいのは、例えば次のような日です。

  • 長時間、暑い屋外で遊んだ
  • スポーツや部活動をした
  • 服や髪が濡れるほど汗をかいた
  • 暑さで食事量が少なくなっている
  • 汗を多くかいたあと、水だけを多く飲んでいる

日本スポーツ協会は、運動時の水分補給では、状況に応じて0.1〜0.2%程度の食塩と糖質を含む飲料が有効としています。

大切なのは、「夏は必ず塩分入り飲料」と決めることではなく、汗の量や活動時間、食事の状態に合わせて補給方法を変えることです。

ナトリウムは、神経の電気信号を支えています

ナトリウムは、神経伝達物質ではありません。

ナトリウムは、神経細胞や筋肉が働くために必要な電解質の一つです。

脳や末梢神経の細胞は、細胞の内側と外側でナトリウムやカリウムなどのイオンを移動させ、電気的な変化を作ります。

この電気信号によって、

  • 感覚を脳へ伝える
  • 脳から筋肉へ指令を送る
  • 身体を動かす
  • 心臓や血管の働きを調節する

といった活動が成り立っています。

ナトリウムは、身体の水分量や循環する血液量を保つことにも関わっています。

発汗による水分喪失と電解質バランスの変化が重なると、

  • だるさ
  • 頭痛
  • めまい
  • 吐き気
  • 集中しにくさ
  • 筋肉のけいれん

などが現れることがあります。

ただし、これらはナトリウム不足だけに特有の症状ではありません。

「ぼんやりしているから塩分不足」と決めつけるのではなく、夏の不調を考える一つの視点として捉えます。

普段の減塩と、汗をかいたあとの補給は別に考えます

塩分の取りすぎを避けることは、健康を守るうえで大切です。

子どもに日常的に濃い味の食事や、塩分の多い食品を勧める必要はありません。

しかし、

普段から塩分を取りすぎないことと、
大量に汗をかいたあとも水だけで済ませること

は同じではありません。

大量に汗をかいたときには、身体から水分と塩分の両方が失われています。

普段の減塩を意識するあまり、汗をかいたあとまで塩分を極端に避けると、失った分の補給が追いつかないことがあります。

普段の食生活と、大量に汗をかいたあとの補給は分けて考える。

これが今回のポイントです。

今日からできること

汗をたくさんかいた日に、手作りドリンクを1杯用意する

外遊びやスポーツで服が濡れるほど汗をかいた日には、水だけでなく、塩分と糖質を含む飲み物を用意してみましょう。

500mL分の基本レシピ

  • 水:500mL
  • 食塩:0.5〜1g
  • レモン果汁:好みで少量
  • 甘味:砂糖またはアガベシロップのどちらか一つ

食塩0.5〜1gを500mLの水に加えると、食塩濃度は約0.1〜0.2%になります。

砂糖を使う場合

  • 砂糖:大さじ1〜1杯半
  • 重量の目安:約9〜14g

砂糖はブドウ糖と果糖からできており、運動後のエネルギー補給にも利用されます。

アガベシロップを使う場合

  • アガベシロップ:小さじ2〜3程度
  • 製品ごとに甘さや糖質量が異なるため、入れすぎない

アガベシロップは、砂糖より果糖の割合が高く、一般に食後の血糖値が上がりにくい傾向があります。

ただし、血糖値が上がりにくいことだけで、砂糖より健康的だと単純に判断することはできません。果糖の取りすぎを避けるため、少量にします。

医療用の経口補水液では、ブドウ糖とナトリウムが小腸から一緒に吸収される仕組みが利用されています。

アガベシロップは医療用経口補水液のブドウ糖を置き換えるものではなく、健康な子どもが汗を多くかいた後に飲む手作りドリンクの選択肢の一つです。

食塩は、できれば重さを量ります

小さじなどの家庭用スプーンでは、塩の粒の大きさや、すり切り方によって誤差が生じます。

可能であれば、キッチンスケールを使って重さを量ります。

材料をよく混ぜ、清潔な容器に入れて冷蔵します。

一気に飲まず、休憩しながら少量ずつ飲みます。作った飲み物は保存せず、その日のうちに飲み切ってください。

毎日の飲み物にはしません

この手作りドリンクは、

  • 基礎疾患のない子どもが
  • 外遊びや運動で汗を多くかいたあとに
  • 水分、塩分、糖質を一時的に補う

ことを想定しています。

普段の水分補給や、短時間の軽い活動では、水やお茶を基本にします。

甘味を含むため、汗をあまりかいていない日も習慣的に飲ませるものではありません。

手作りドリンクと経口補水液は違います

今回の手作りドリンクは、医療用の経口補水液ではありません。

医療用の経口補水液は、脱水時に水分と電解質を効率よく吸収できるよう、ナトリウムやブドウ糖などの濃度が調整されています。

例えば、WHOが示す低浸透圧経口補水液では、ナトリウムとブドウ糖がそれぞれ75mmol/Lに調整されています。

嘔吐や下痢が続いている場合や、明らかな脱水が疑われる場合には、家庭で作ったスポーツドリンクを医療用経口補水液の代わりに使わないでください。

家庭の飲み物だけで対応しない症状

次のような場合は、手作りドリンクを飲ませて様子を見るだけにしないでください。

  • 呼びかけへの反応がおかしい
  • いつもと様子が大きく違う
  • 意識がぼんやりしている
  • まっすぐ歩けない
  • けいれんがある
  • 強い頭痛がある
  • 繰り返し吐いている
  • 水分を自力で飲めない
  • 身体が非常に熱い
  • 尿が極端に少ない
  • 涼しい場所で休んでも回復しない

熱中症が疑われる場合は、まず涼しい場所へ移動し、衣服を緩め、首まわり、脇の下、脚の付け根などを冷やします。

本人が安全に飲める状態であれば、水分と塩分、または経口補水液を少量ずつ飲ませます。

意識がおかしい、けいれんがある、自力で飲めない場合は無理に飲ませず、救急要請を含め、速やかに医療につなげてください。

塩分を自己判断で増やしてはいけない子ども

次のような場合は、自己判断で塩分入り飲料を増やさず、主治医に確認してください。

  • 腎臓病がある
  • 心臓病がある
  • 高血圧がある
  • むくみがある
  • 塩分や水分の制限を指示されている
  • 糖尿病や血糖の問題がある
  • 代謝疾患がある

乳幼児についても、家庭で目分量によって作るより、年齢や目的に合った市販製品を選ぶ方が安全な場合があります。

まとめ

夏の外遊びや運動のあと、水を飲ませても子どもの元気が戻らないことがあります。

その背景にはさまざまな理由がありますが、汗で水分と一緒にナトリウムを失っていることも、一つの可能性です。

ナトリウムは神経伝達物質ではありませんが、神経細胞が電気信号を作り、筋肉が働き、身体の水分量を保つために必要な電解質です。

普段の減塩と、大量に汗をかいたあとの補給は分けて考えます。

今日からできることは一つです。

服が濡れるほど汗をかいた日に、水だけでなく、少量の塩分と糖質を含む手作りドリンクを1杯用意する。

砂糖または少量のアガベシロップから、家庭に合うものを選べます。

ただし、手作りドリンクは医療用の経口補水液ではありません。症状が強いときや、飲んでも回復しないときには、家庭での補給だけで済ませず、適切な医療につなげることが大切です。

参考文献

  1. 公益財団法人日本スポーツ協会 スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック ↗
  2. 厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト ↗
  3. 環境省 熱中症予防情報サイト ↗
  4. WHO Oral rehydration therapy and oral rehydration salts ↗