Brain Management

「考えないで」と言うほど、頭に浮かぶのはなぜ?―白熊実験から考える、なりたい結果のイメージづくり

考えないようにしているのに、失敗する場面が何度も頭に浮かぶ。そんなとき、「考えないで」と止める以外にも、大人にできることがあります。白熊実験から思考抑制の特徴を知り、「本当はどうなっていたらうれしい?」と問いながら、本人が向かいたい未来を一緒に具体化する方法を考えます。

執筆
スクエアクリニック
翌日の学校発表を前に、机で資料を見ながら考えている男の子と、隣で静かに見守る母親

明日、学校で発表があります。

準備をしているのに、子どもの頭には、

「途中で間違えたらどうしよう」
「声が止まったらどうしよう」
「みんなに見られて、笑われたらどうしよう」

と、起きてほしくない場面が何度も浮かんできます。

大人から見ると、

「そんなことばかり考えなくてもいいのに」

と思うかもしれません。

でも、本人も好きで考えているわけではありません。

考えたくないのに、また頭に戻ってきてしまう。

子ども自身も、それに困っていることがあります。

そんなとき、大人は安心させようとして、

「失敗することばかり考えないの」
「緊張しないで」
「大丈夫だから」

と声をかけます。

でも、「考えないようにする」ことは、思っているほど簡単ではありません。

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白熊のことを、考えないでみてください

少しだけ試してみましょう。

今から少しの間、白熊のことを考えないでください。

白い熊。

雪の上にいる白熊。

できるだけ思い浮かべないようにしてみます。

どうでしたか?

あまり浮かばなかった人もいるでしょう。

一方で、考えないようにしているうちに、かえって白熊が頭に浮かんだ人もいるかもしれません。

心理学では、ある考えを意識的に頭から追い出そうとすることを、思考抑制と呼びます。

有名な白熊実験では、考えないようにした対象が途中で頭に浮かぶことや、条件によっては、そのあとにかえって浮かびやすくなることが報告されています。

発表前の、

「失敗しないように」
「間違えないように」

という思いも、似たところがあります。

本人は失敗したいわけではありません。

失敗したくないと強く思うなかで、何度もその場面が頭に浮かぶことがあります。

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では、問いを変えてみます

「本当は、どうなっていたらうれしい?」

「失敗しないようにする」ことだけを考えるのではなく、

本人が本当はどんな未来を望んでいるのかを、一緒に考えてみます。

人には、まだ起きていない未来を心の中で思い描く力があります。

明日の教室。

発表が終わったあとの自分。

席へ戻ったときの気持ち。

そんな未来を、少しずつ具体的にしていきます。

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まずは、一つ聞いてみる

明日の発表を心配している子どもに、

「発表が終わったとき、どうなっていたらうれしい?」

と聞いてみます。

子どもが、

「最後まで言えたらいい」

と答えたら、

「終わったとき、どこにいる?」

と聞いてみます。

「自分の席に戻ってる」

「そのときの自分、どんな感じ?」

「ちょっとホッとしてる」

そうすると、

「発表が終わって、自分の席に戻って、ちょっとホッとしている自分」

という未来が、少しずつ形になってきます。

大きな目標でなくて構いません。

本人が、

「こうなっていたら、うれしいな」

と思える未来を、一緒に見つけていきます。

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こんなふうに聞いてみます

子どもが答えやすそうなところから、聞いてみてください。

1. 「終わったとき、どうなっていたらうれしい?」
2. 「そのとき、どこにいる?」
3. 「そのときの自分は、どんな感じ?」
4. 「どんな気持ちがしそう?」
5. 「一言にするとしたら?」

全部聞く必要はありません。

一つ、二つでも十分です。

子どもの言葉を聞きながら、その子の、

「こうなれたらいいな」

を一緒に形にしていきます。

頭の中に映像がはっきり浮かばなくても構いません。

言葉や雰囲気で考えるほうが分かりやすい子もいます。

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本人にとっての「こうなれたら」を探す

大人が考える「理想の発表」にする必要はありません。

「最後まで自分の声で読めたらいい」

と思う子もいるでしょう。

「途中で止まっても、もう一度始められたらいい」

と思う子もいるかもしれません。

「緊張していても、前に立てたらいい」

でも構いません。

本人が、

「こうなれたらうれしい」

と思えるなら、それがその子の向かいたい未来です。

大人は、その答えを決めるのではなく、一緒に見つけます。

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「失敗したらどうしよう」の隣に、もう一つ

「失敗したらどうしよう」

という未来があっても、その隣に、

「でも、自分はこうなっていたらうれしい」

という未来を一つ置いてみます。

たとえば、

「失敗する自分」

だけではなく、

「発表が終わって、自分の席に戻り、ちょっとホッとしている自分」

も持ってみる。

今回見てほしい小さな変化は、

本人が向かいたい未来が一つ増えたか。

それだけです。

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今夜、一度だけ聞いてみる

明日の発表。

試合。

テスト。

初めて行く場所。

子どもが、これから起こることを心配していたら、

「考えないで」

と止める代わりに、一度だけ聞いてみます。

「じゃあ、本当はどうなっていたらうれしい?」

そこから一緒に、その子の未来を少しだけ作ってみてください。

「失敗したらどうしよう」だけだった頭の中に、

「自分は、こっちへ行きたい」

という未来が一つ増える。

子どもの頭の中にある未来を、大人が決めるのではなく、本人と一緒に見つけていく。

それが、今回のBrain Managementです。

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不安がとても強いときは

不安や強迫的な考えが強く、学校・睡眠・食事など日常生活に大きな影響が出ている場合や、子どもの様子が急に大きく変わった場合は、今回のような家庭での工夫だけで抱えず、医療機関などへ相談してください。

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参考文献

  1. Wegner DM, Schneider DJ, Carter SR III, White TL. Paradoxical effects of thought suppression. ↗Journal of Personality and Social Psychology. 1987;53(1):5-13. doi:10.1037/0022-3514.53.1.5. PMID:3612492
  2. Abramowitz JS, Tolin DF, Street GP. Paradoxical effects of thought suppression: a meta-analysis of controlled studies. ↗Clinical Psychology Review. 2001;21(5):683-703. doi:10.1016/S0272-7358(00)00057-X. PMID:11434226
  3. Holmes EA, Mathews A. Mental imagery in emotion and emotional disorders. ↗Clinical Psychology Review. 2010;30(3):349-362. doi:10.1016/j.cpr.2010.01.001. PMID:20116915
  4. Schacter DL, Addis DR, Buckner RL. Episodic simulation of future events: concepts, data, and applications. ↗Annals of the New York Academy of Sciences. 2008;1124:39-60. doi:10.1196/annals.1440.001. PMID:18400923